夕方に冷蔵庫の中を覗いて見ると、終末のまとめ買いの食材が、今夜ひと晩くらいはなんとか腹をすかさずに済むであろう「わずかさ」で残っている。なにも無いなら無いで、夕食を近所の店で済ませてしまう口実になるのだけれど、この「わずかさ」が心に刺さるのだ。
卵は3個ある。合い挽き肉が3分の1パック、スーパーに行くと必ず買ってしまうモヤシが、ヒゲの先が疲れた感じでひと握り。プラカップに半分の納豆、醤油はかけられていない。刻まれたネギ少々。「そうすると美味しく炊けるよ」と教えてもらい、火曜の朝にといで水を切り、ボウルに移しラップしておいた米1合。
昨晩は結局上司の愚痴ともつかぬ話につき合わされたんだ。
LINEとインスタをチェックする。私の身の回りには特別なことは無く、ただ、私の暮らす街も「ともだち」の暮らす街も水曜日の雨の中にあるようだ。
結局チャーハンを作った。卵と合い挽き肉と納豆とネギのチャーハン。そしてモヤシを具にしたみそ汁。『雨がベランダをシトシトと叩く音と納豆チャーハンは合うのだろうか?』これ以上無いだろう他愛も無い思いの隙間にLINEが届く。
>今から来れる? >今日はやめとく 既読
>じゃあ明日 >うん、明日 既読
>今なに食べてる? >チャーハン >いいね! >うん 既読
スタンプのブタのキャラクターがひらひら手を振る。
フフッとこぼれた声が雨音と共に、夜の街へ転がってゆく。
筆名:小池アミイゴ 年齢:54歳 都道府県:東京
どこかにありそうな、共感を持たれそうな一枚の絵。
返信削除結局、外に出ないで良かったのかも(笑)最後のフフッがピリッと効いてますね~